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  • 第15回本フェチ大賞 大賞「ときかさね」真宮様 [EatIn]

大賞
「ときかさね」
真宮様 [EatIn]

第15回大賞

深雪に残された二人の足跡は鮮やかな日々への入り口…
かさねる時の彩りを味わうアンソロジー

仕様

【カバー】
用紙:パチカ 130kg + マットPP/印刷:1色
加工:加熱型押し(空押し)
【表紙】
用紙:ハイマッキンレーポスト 200kg + クリアPP/印刷:4色フルカラー
【遊び紙】
タント 70kg P-67(ペールブルー) / タント 70kg N-58(ひまわり) / タント 70kg D-52(赤) / タント 70kg H-70(群青)
【口絵】
用紙:マットコート 110kg/印刷:4色フルカラー
【本文】
用紙:上質 90kg/印刷:スミ刷り
【製本】
無線綴じ

Interview

今回のご本が生まれたきっかけは何でしょうか?

この本は、狛治さんと恋雪さんのふたりの、1日の時間の移り変わりをテーマにしたアンソロジーです。
5年前にも同じカップリングでアンソロジーを企画し、その時は春夏秋冬をテーマにいたしましたので、今回は朝・昼・夕・夜の4幕構成で、ふたりの何気ない日常の中の幸せを切り抜きたいと思い企画しました。
タイトルの「ときかさね」は、時を「重ねる」の意と、着物の「襲(かさね)」を掛けて命名しました。

使用された紙・加工と、特にこだわりを持った部分があれば教えてください。

パチカ紙は、多くの同人作家にとって憧れの紙ではないでしょうか。少なくとも私にとっては、人生で1回はこの紙で本を作ってみたい、というのが長年の夢でした。そのため、今回はパチカ紙で加熱型押しをすることを前提にデザインを考えていき、最終的に「雪の中を並んで歩くふたりを室内から見ている」を表紙のテーマにしました。

恋雪さんのイメージである雪の白さ・質感をパチカ紙そのもので表し、新雪に踏み込んだ足跡を加熱型押しで表現。並んで歩く足跡はパースをかけて作成しましたが、恋雪さんの足跡は小さく、歩幅が少し狭くなるようこだわりました。

また、当初は表紙用紙としてパチカ紙をそのまま使用する予定でしたが、割れがでやすいとのことでカバー掛けに変更。遊び紙や口絵を冒頭・巻末に挟まずとも表紙で透け感を出せるようになったので良い変更だったと思います。カバー下の表紙は、昼から夜への移り変わりをイメージし「オレンジ→紺」の水彩グラデーションにしました。「ときかさね」のロゴは、表表紙・裏表紙・背表紙の3か所に配置したため、ちょうどそれぞれのロゴのところでオレンジと紺が混ざり合って見えるように調整しました。

巻中には「遊び紙+カラー口絵」を4幕構成のそれぞれの冒頭に差し込みました。遊び紙は、色数の選択肢が広く、かつ和の雰囲気があるタント紙を使用。時間の移り変わりを視覚的に感じてもらいたく考案しました。

1冊ずつ加熱型押しの個体差があるので、同じものはひとつとしてない、という点も気に入っています。

今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?

2025年8月:アンソロジー企画立ち上げ、売り子確保、執筆者へ声掛け
2025年9月:執筆メンバー決定、原稿規格の共有、ロゴ作成、装丁を検討し印刷スケジュールを計画、原稿提出〆切日程決定
2025年10月:X企画アカウントにて情報解禁、装丁について緑陽社様と相談を重ね用紙を確保していただく
2025年11月:表紙デザイン作成、執筆メンバー公開、イベント会社への各種申請
2025年12月:提出原稿の校正(※執筆者の原稿は12月中旬〆切)、企画ホームページ公開、表紙や装丁・ページ数などの情報を公開、表紙入稿、主催の原稿執筆
2026年1月:ノベルティデータ入稿、口絵・本文の入稿、書店委託申し込み、通販情報公開、ポスター・お品書き入稿、執筆者紹介とサンプル公開を毎日カウントダウン
2026年2月:執筆者に献本送付、イベント同日の設営案内、イベントにてアンソロ頒布、通販手配

今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けてメッセージをお願いします。

パチカ紙は繊細な紙であり、そのまま表紙用紙として使用すると経年劣化が早い、ということを打ち合わせにて現物を見せてご説明いただき、カバー用紙に使うというやり方に変更しました。これは打ち合わせがなければ得られなかった情報であり、装丁相談室のご利用をおすすめいたします。また、用紙の確保にも時間がかかるため、計画されている方は早めにご相談されるのが望ましいかと思います。
加えて、4か所に及ぶ巻中差し込みが複雑なので、主催側でもページ台割が作成できているとスムーズだと思います。台割確認だけでも複数回やり取りしました。

最後にひとことお願いします!

このたびは栄えある賞を頂戴し、大変嬉しく思います。
第11回本フェチ大賞にて『吉日花暦』で「表紙デザイン賞」を頂いており、2回目の受賞となります。
装丁に込めたこちらの意図を深く汲み取ってくださった緑陽社のスタッフの方々をはじめ、多くの方の手が入って出来上がった1冊です。手触りも楽しい本となっていますので、幾度となく本棚から手に取って撫でてもらえるような本に仕上がったと自負しています。
同人誌はもちろん中身が大切であり、装丁は作者の自己満足の世界です。ですが、装丁にはその中身をより魅力的に盛り上げる力があり、「自分の世界観が形になる」という喜びがあるとても面白いものだと思っています。まだまだやってみたい装丁がたくさんあるので、これからも楽しく探求していきたいです。

Staff Comment

特殊装丁好きには大人気の紙「パチカ」。

柔らかく起毛したような質感をもち、ホットスタンプ加工により磨りガラスのように透明化する特質があります。この触感と加工による立体的な変化が、多くのクリエイターの創作意欲を刺激し続けています。

ただその繊細さ故に、非常に扱いの難しい用紙です。用紙の毛羽立ちに阻まれて印刷は綺麗にのりませんし、ホットスタンプによる用紙の「透け」も加工面積が大きいと紙の表面が波打ち、ヨレてしまいます。PPをかけないと折り目や背の糊付け部分からボロボロと経年劣化してしまいます。

「ときかさね」はそんな繊細で美しいこの紙の良い面と悪い面に時間をかけて向き合い、特性を最大限に活かした真摯な作品です。

ホットスタンプのデザインを、細い線画をメインにして表1-表4に均等に配置することで、加工で起こるヨレを抑えつつ、決してくっきりとはしない絶妙な透け感を「雪に残る足跡」に見立てており、加工の特性と用紙の手触りを活かしています。

巻中の色鮮やかな遊び紙と口絵は、淡く白い印象のカバーとの対比となり、刻一刻と色を変える鮮やかな日常を美しく彩っています。

ときをかさねてすごす二人の日々を、永続的な保存性の対極とも言える儚さ漂う用紙を用いて、工夫を尽くし、優しく包み込んだ珠玉の一冊。

この本を手に取る人は、そのこだわりと愛情に感嘆のためいきを漏らすことでしょう。

 

▼ 第15回 受賞作品 ▼


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