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特別賞
「天使の食物誌」
Bluegold様[青金堂]

第15回特別賞

小口に浮かぶ物語。紙の本でしか出会えない天使と悪魔の食物史

仕様

【表紙】
用紙:ハイマッキンレーポスト 200kg +クリアPP/印刷:4色フルカラー
【遊び紙】
用紙:クラシコグロス イエロー 47kg
【本文】
用紙:ハイマッキンレーアート 135kg/印刷:4色フルカラー
【製本】
無線とじ

Interview

今回のご本が生まれたきっかけは何でしょうか?

天使と悪魔である主人公たちがエデンの園から現代まで6000年間ずっと人間たちを見守っている中に差しはさまれる人間の食べ物やお酒を楽しんでいるシーンがとても好きなので、歴史の中で出会って楽しんだであろう食べ物にまつわるミニエピソードを色々想像して調べては描いていたものがだいぶたまったので再録集にしました。

使用された紙・加工と、特にこだわりを持った部分があれば教えてください。

装丁のテーマ
主人公の一人がロンドンで古書店を営んでいるので、毎回西洋の古書風の要素を少しずつ入れているのですが、今回は傾けると絵が現れる小口絵(fore-edge painting)に挑戦してみました。小口染めではなく傾けた時だけ絵が現れるもので、10世紀頃からあったそうですが17-18世紀のイギリスで流行しました。本来はもっと厚い本の小口側に横長の風景画などを描くことが多く、ページを斜めにずらして固定して手書きで描くものです。
裏側にも違う絵があるタイプは double fore-edge paintingとよばれ、ページを傾ける向きを変えると絵が変わるさまが面白いのでこちらを採用しました。
絵自体は紙の切り口ではなくそれぞれのページの端にあればいいので細く分割すれば通常印刷で可能です。探してみると似たようなことをされている方もいたのでなんとかなるかなと。

表紙について(紙/印刷/加工)
経年劣化でむらのあるダークグリーンの革に金箔押しの装飾のある古書のイメージです
丁度いいテクスチャがなかったので地の革は手描きで、金の装飾枠の部分は箔押し加工も考えたのですが、真新しいきらめきだと古ぼけ感が出ないなと悩み結局手書きで金箔風に光ったり陰になっているように塗りました。

本文について(紙/印刷/加工)
製本・その他
本物は傾けた本の小口に手書きで絵を描く加工ですが、印刷で再現するためにページの端分割した絵を張り付けることで再現しました
端までしっかり色が乗らないときれいに絵がつながらないので塗り足し分が必要ですが
単純に分割して塗り足しにはみ出させると切り落とされた分絵が圧縮されてしまうので縦方向に引き伸ばし変形をしてそれをページ数の半分で割り、四角い選択範囲でクリップスタジオのグリッド背景を頼りに一定幅に少しづつ切り取って奇数または偶数のページの端っこに枠線をまたいで乗せていくという作業をちまちまと繰り返しました。ページ数が50Pでまだよかったです
張り終わったらテスト用の豆本サイズをコンビニでプリントし、切ってクリップで束ねて曲げてみて小口に絵が出ることを確認したり、縦の引き延ばしのせいで太くなる線を修正したりしました

図案はシスティーナ礼拝堂のミケランジェロのアダムの創造をオマージュしました。
神(右)がアダム(左)に命を吹き込む瞬間の手です。
今回の本は天使と悪魔が人間の歴史に付き合いながら楽しんだいろいろな食文化についての本なので、人間が人間らしく文明を築いていくその最初のきっかけのエデンのリンゴを渡すところ、リンゴが食べられた後の二枚の絵にしました

今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?

今回は再録で日数がかかるオプションはなかったので原稿の調整を頑張るのみでしたが、
2か月前から目次を作りながら過去の原稿を並べ始めましたが次々に文章だけで触れていたあのテーマもこのテーマもと追加したくなり、描きながら投稿しながら原稿にも並べていくという感じでした。そのほか表紙絵に5日、小口絵を描くのはすぐできましたが切り張り作業が不慣れなのもありたった25ページずつでも思ったより大変で、テスト豆本を作って確認修正をしたりで1週間ぐらいかかりました。イベント5日前に自宅で確認できるように締め切り設定をしました

今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けてメッセージをお願いします。

ひたすら人力作業です。奇数ページ、偶数ページ、がそれぞれ裏表の絵になるのでページの並びが確定してから貼り付け作業をしないと混乱しますのでご注意下さい。やってみたいという方はXの方にも作業過程を載せましたので合わせてごらんください

最後にひとことお願いします!

この度身に余る賞をいただき本当にありがとうございました。エントリー外から拾っていただいたためご連絡をいただき本当に驚きました。オプション加工を使わずに人力作業での仕掛けだったため、歴代の受賞者の方々のような緑陽社さんならではの素晴らしいオプションのご紹介ができず申し訳ない気持ちですが、装丁そのものの面白さを幅広くご評価いただき感動しています
次はオプションを使いこなして面白い工夫をしてみたいです!

Staff Comment

スタッフが原稿データを確認しているときや、印刷をしているときには、この仕掛けには思いも寄らなかったことでしょう。
製本機で綴じ、そして、仕上がりサイズに断裁機でズンと化粧裁ちした瞬間に初めてこの仕掛けが露わになります。
「ずるい!」
この作品が冊子の形になった瞬間に立ち会った製本スタッフに、わたしは軽い嫉妬を覚えました。作家様ですらまだ見ていない、この仕掛けの完成した瞬間を、独り占めしたのですから。
これは、紙の本でなければ楽しめないギミックです。

わたくしごとで恐縮ですが、わたしは、紙の本が大好きです。
指先から伝わってくる紙の感触。
ページをめくるときに次のページの端にある思いがけない文章が目に飛びこんできて上がる心拍数。
ふと小口を見て、これまで読んできたページの厚さと、薄くなってゆくこれから読むページの厚みを見比べたときの達成感と一抹の寂しさ。
久しぶりに開いたときに、遠い昔にはさんだままにしていたしおりを見て感じる、過去の自分と邂逅したような懐かしさ。
ページを繰る平面だけでは味わえない愉快さが、紙の本にはある気がするのです。

こちらの作品は、そんな紙の本の愉快さを教えてくれるだけでなく、新しい切り口をわたしたちに紹介してくれます。
驚嘆するのは、この仕掛けにするために原稿作成に注いだ知恵と工夫と作業です。
作家様が詳しく説明されているのでここでは省略しますが、その並々ならぬご調整の日々と根気からは、作品への深い愛がひしひしと伝わってきます。

また、通常、本屋さんで販売されている多くの書籍は、校正刷(試し刷り)や試作を、本番と同じまたは極力似せた環境で行ってから製造しているのですが、こちらの作品は校正刷なしで発注されています。
もしかするとお手元での試作と異なった仕上がりになってしまうご不安もあったのではないでしょうか。
校正刷・試作のない同人誌でこちらの仕掛けの実現を委ねてくださった作家様にスタッフ一同心より感謝申し上げます。

▼ 第15回 受賞作品 ▼


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