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  • 第14回本フェチ大賞 アイディア賞「Bye Bye」嘉賀 千晃様[1-pen]

アイディア賞
「Bye Bye」
嘉賀 千晃様[1-pen]

第14回アイディア賞

二つの物語が収束するとき、
秘密が明かされる……リバーシブル本の特性を活かした驚きの1冊!

仕様
【表紙】 用紙:きほん紙 キュリアスIR ホワイト 206.5kg/印刷:2色刷り(あさぎ、サイバーピンク)
【加工】 寸足らず表紙
口絵 用紙:マットコート 110kg/印刷:4色フルカラー(巻頭、巻末)
【本文】 用紙:クリーム書籍用紙 72.5kg/印刷:スミ刷り
【製本】 無線とじ

Interview

嘉賀 千晃様、今回のご本が生まれたきっかけは何でしょうか?

12月のイベントに向けて、新刊を考えていた際に思いつきました。
以前からリバーシブル本に興味があり、メインの登場人物となる二人の視点をそれぞれから綴った小説を書きたいと思っていたところ、ちょうど緑陽社様の正方形本フェアがあり、こちらを活用することにしました。
「本の外形である正方形を何か物語に使えないか?」という点から、正方形の部屋をイメージし、物語の冒頭でメインキャラ二人が閉じ込められる部屋と結びつけています。

使用された紙・加工と、特にこだわりを持った部分があれば教えてください。

★装丁のテーマについて
装丁のテーマは「共通感」と「違い」です。
今回の本はリバーシブル本であり、左右どちらから読んでも大まかな作中でのイベントや時間軸は共通ですが、左右でキャラクターの視点が異なるため、作中で発生したイベントに対しての動きや感情が違います。
物語は「同じ出来事でもそこにかかわる人の数だけ物語がある」というテーマで執筆したので、パッと本を手に取った時に共通感を感じさせつつも、ちゃんと左右で違いがあるということがわかるように装丁を決めました。
共通感と違いについては、特に表紙で表現しています。

★表紙について
メインとなるキャラの特徴として、キラキラした美しい瞳と白い髪がパッと思い浮かぶので、表紙用紙にはキュリアスIR ホワイトを使用しています。上品にきらめくお気に入りの白系用紙です。

登場する2人のメインキャラを象徴するカラーを水色とピンクとし、どちらの表紙側がどのキャラクターの視点での物語かをわかりやすくするためにイメージカラーに基づいてオフセット印刷をしました。片面をあさぎ色、もう片面をサイバーピンク色で刷り色指定した2色印刷です。
共通感を持たせるため表紙のデザインは左右でほぼ一緒にしていますが、一部違うところとして、カップリングの名前の横に●をつけることで、この表紙側から始まる物語がどのキャラクター視点のものになるかを記号でも示しました。

表紙で特にこだわった加工は、なんといっても両側寸足らず加工です。
左右どちらも寸足らずにすることで、イメージカラーを背景にした口絵をちら見せしています。ここでチラ見えしているアイテムは、それぞれのキャラの物語のキーアイテムとなるものです。ここは二人の物語の違いを表現するために、違うアイテムを見せています。

★本文について
口絵をそれぞれの物語の最初のページに配置しています。(本の中の位置としては巻頭・巻末)
表紙側を白背景×各キャラカラーの文字のデザインにしたので、口絵は各キャラカラーの背景×白文字にしたかったのですが、オフセット印刷の油性インキでベタが多いと読んでいるときに手についてしまうおそれがあるということで、オンデマンド印刷としました。

物語本文はリバーシブル本であるため、それぞれの物語本文を180度回転させて配置しています。
長文でも読み疲れにくいよう、うっすらクリーム色がかった書籍用紙を採用しています。
あとがきと奥付けはそれぞれの物語を読了後に読めるよう、各物語の終わりの位置に配置しています。(およそ本の中央)

★製本・その他
上辺を断裁し、正方形加工をしました。
個人的に紙の本の一番好きなところは、読者自身でページをめくって物語を読み進められるところです。この本でもページをめくって物語に入っていく体験ができればいいなと思い、表紙をめくって口絵の全貌が現れると、物語キーアイテムとともに各視点の物語におけるキャッチフレーズが出てくるようにしました。
また今回の物語のタイトルは「Bye2」(バイバイ)ですが、両表紙のByだけ色を変えています。
これは各視点の物語を最後まで読んで、奥付けに辿り着いた時に意味をなす仕掛けです。
二つの物語の間に位置する奥付のページに「&(and)」が隠されており、表紙の左右にあるカラーの文字「By」と奥付の「and」をつなげて読むと「By and By」=「やがて〜」というイディオムになります。
本作は、両思いになった二人が冒頭のある出来事がきっかけで一度は離れてしまうことになりますが、いろいろな試練を乗り越えやがて再び想いを通わせることになる…というストーリーとなっているため、誰もが最初に目にすることになる表紙と、最後に読む奥付を使って、結末につながる仕掛けを仕込みました。
表紙の文字の一部の色が変わっているので「ん? ここだけ色が違う?」と不思議に思った方もいるかと思うのですが、最後まで読んだ時に「ああ、なるほど! そういうことか!」と思っていただけたら嬉しいです。

今回のご本はどのようなスケジュールで進められましたか?

2024年 秋:情報収集
10月中旬〜10月後半:執筆と並行して見積もりと相談
11月:入稿
12月:納品

2024年12月開催のイベント合わせでの本作りであったため、およそ2ヶ月前から動き始めました。
緑陽社さんは大型イベント前にお得なフェアを実施してくださることが多く、昨年は十月にフェア内容の発表があったため、発表されてから早いうちにチェックしました。
その中で自分の本に使えそうなフェアがあったため、すぐに本の装丁を考え初期見積もりを出しました。その後は、見積もりや相談を重ね、自分のやりたい装丁と予算が一致したところで、入稿し製本していただきました。

今回のご本のような装丁で同人誌を作ってみたい!とお考えの方に向けてメッセージをお願いします。

標準オプションにないメニューは特に早めの相談を意識するのが良いと思います。
今回の本で言えば、両側寸足らず加工は標準オプションにないメニューです。このオプションを設定する際の注意や懸念事項もありました。
これは緑陽社さん側に確認しなければわからないことだったので、早めに聞いておいてよかったと思います。相談の結果、丁寧にリスクをご説明いただけたので、懸念事項を把握した上で印刷・製本を依頼することができました。

また、ものによっては『こういう装丁がしたい』というリクエストが実現不可となるときもあります。時間があればやりたいことに近しい代替案も考えられたのに……となってしまうのは悲しいので、そうしたリスクも踏まえ、なるべく早い段階での相談がおすすめです。
特に今回は本文に特殊な加工をしない予定だったので、本文が出来上がる前におよそのページ数を見積もることで、早めに相談をスタートさせました。

最後にひとことお願いします!

この度はアイデア賞という素敵な賞をいただきありがとうございます。大変光栄なことに昨年に続き、再び大好きなカップリングの本でアイデア賞受賞の連絡をいただいた時は、驚きと喜びで胸がいっぱいでした。

今回の装丁は標準オプションにない加工も含まれているため、緑陽社様にはさまざまなご相談に乗っていただきました。作成にあたり各オペレーター、担当の皆様にはご尽力いただき感謝しております。

私自身、過去の受賞作を参考にさせていただくことが多いので、もし本作もどなた様かの本作りの参考になりましたら幸いです。

末筆ではございますが、今回の本作りにあたりお世話になった皆様方に心より感謝申し上げます。

Staff Comment

リバーシブル本の特異性を見事に活用した意欲作です。冊子の両面から読み進められる構成により、二つの異なる物語が最終的に一点で交わる仕掛けが秀逸です。

読者は表紙から読み進め、物語の途中で冊子を回転させることで、新たな視点からもう一度物語を体験できます。特に巧みなのは、タイトルの「Bye Bye」という言葉が意外な意味を持つ仕掛けです。本を閉じると、改めてカラー口絵のキーアイテム・表紙のタイトルが目に入り、装丁の意図が読者の心にグッと刺さること間違い無しです。

両側寸足らず、という変わったの表紙デザインも、物語の「二面性」を象徴する絶妙な演出となっており、読者が手に取る際の触感から読後の余韻まで、すべての要素が計算されたアート作品となっています。

▼ 第14回 受賞作品 ▼


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